1. はじめに:なぜ「減価償却」が不動産投資のカギなのか?
不動産投資が「節税につながる」と言われる理由をご存知でしょうか?
その中心にあるのが、「減価償却」という会計上の仕組みです。
これは一言でいえば、“お金を実際には使っていないのに、経費として計上できる”という制度。
不動産投資の収支戦略において、極めて大きな意味を持ちます。
この仕組みを知らずに不動産を持つのは、
「目をつぶって綱渡りをする」ようなもの。
それぐらい、不動産投資をするうえでは必ず押さえておきたい重要キーワードです。
現実のキャッシュが残るかどうかは、帳簿の上だけでは見えてこない。
その“ズレ”の根源にあるのが、まさに減価償却なのです。
減価償却は、「手元にお金を残すための合法的な魔法の数字」です。
不動産投資の全体像をつかむうえで、絶対に外せない基本といえます。
2. 減価償却とは? ざっくり理解の第一歩
建物は時間とともに古くなり、価値が下がっていきます。
その価値の減少分を「経費」として分割して計上していく──
それが「減価償却(げんかしょうきゃく)」です。
たとえば、建物の取得価額が1億円で、耐用年数が47年なら、
毎年およそ210万円を経費として落とせるイメージになります。
ここで重要なのは、実際に210万円を支払っているわけではないということ。
購入時にまとめて支払った金額を、年数で割って帳簿上に分割しているだけです。
つまり、お金は出ていかないのに、帳簿上の利益を圧縮できる──
それが、減価償却の最大の特徴です。
3. どんな物件でどれくらい償却できる?
減価償却は、「建物部分」に対してのみ適用されます。
(※土地には適用されません)
また、建物の構造や築年数によって、法定耐用年数が異なります。
構造 | 新築の法定耐用年数 |
---|---|
木造 | 22年 |
軽量鉄骨 | 27年 |
RC造(鉄筋コンクリート) | 47年 |
中古物件では、法定耐用年数をすでに経過した中古物件については、「簡便法」によって短い年数で償却することが可能です。
たとえば、築22年を超えた木造物件であれば、法定耐用年数22年 × 20% = 4年という償却期間になります。
このように、築年数が大きく経過した中古物件ほど、“短期間で経費化できる”=節税効果を早期に得られる特徴があります。
4. 減価償却のインパクト:キャッシュは残り、税金は減る
ここで改めて確認したいのが、“減価償却は現金支出を伴わない経費”という点です。
たとえば、帳簿上は利益が300万円出ていたとしても、
減価償却費がそのうち200万円ある場合、実際に手元に残るお金は500万円近いというケースもあるのです。
この結果、課税される所得が圧縮され、税金の支払いが少なくて済む。
まさに、キャッシュを守る盾として機能してくれるのが減価償却なのです。
5. 減価償却の「終わり」がもたらすリスク──“デッドクロス”という落とし穴
一方で、減価償却には「終わり」があります。
つまり、耐用年数が過ぎれば、もう経費にはできないのです。
ところが、借入金の返済はまだ続いています。
こうなるとどうなるか?
手元のキャッシュは厳しくなっているのに、帳簿上は黒字扱い → 税金はしっかり課税される
この状態を、不動産業界では「デッドクロス」と呼びます。
このデッドクロス、実は非常に奥が深いテーマで、
物件の保有期間・償却スピード・借入返済計画・出口戦略などが複雑に絡んできます。
本記事では概要の紹介にとどめますが、後日あらためてじっくり取り上げたいと思います。
6. 個人か?法人か?──減価償却の活かし方の違い
個人投資家にとっては、減価償却による所得圧縮は「所得税・住民税の節税」につながります。
特に高所得者層にとって、その効果は極めて大きく、手元キャッシュの確保に寄与します。
一方、法人で不動産を保有する場合は、“利益の平準化”や資金繰りコントロールに役立ちます。
また、法人は複数物件を保有しやすいため、減価償却を組み合わせて全体の利益を設計する力が重要になります。
7. まとめ:減価償却は、知って使うべき「制度上の武器」
減価償却は、不動産投資における“魔法の経費”とも呼ばれますが、
決して“ラクして儲かる”ための抜け道ではありません。
むしろ、制度として認められた「資産設計のための道具」なのです。
そのすべてに関わってくるのが、減価償却の力です。
次回はこの流れで、「帳簿管理と確定申告」に話を進めていきます。
“経費にできる/できない”の境界線や、帳簿の読み方を押さえておくことで、
不動産オーナーとしての税務的な基礎リテラシ―を高めていきましょう。
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