1. はじめに:相続対策というと、まず“評価圧縮”が語られがちですが…
「不動産を持っていると、相続税が安くなるらしい」
そんな話を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
確かに、不動産は相続税評価額が大きく下がるという意味で、“評価圧縮効果”に注目が集まりがちです。
ですが、実際の相続対策の現場では、それだけに目を奪われていては危険です。
相続対策には、もっと基本的で、順序立てて考えるべきことがあるのです。
今回は、不動産が相続対策において重宝される理由を、実務的な視点から整理していきます。
2. 相続対策は3ステップで考えるのが基本です
不動産の活用に入る前に、まず押さえておきたいのが、相続対策の「順番」です。
実務では、相続対策は次の3つのステップで考えるのが基本です。
💡 多くの人が一番注目する「評価対策」は、実は最後の段階に過ぎないのです。
3. それでも不動産が選ばれる理由:評価圧縮のインパクトが大きい
評価対策は最後とはいえ、やはり不動産の“武器”として圧倒的に効果的なのは事実です。
✅ 土地
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路線価または倍率方式で評価
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都内不動産の場合、実勢価格の50%以上下がることも
✅ 建物
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固定資産税評価額ベースで評価
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実勢価格の50〜70%程度にとどまるケースが多い
✅ 貸家・貸付地
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貸家建付地や貸家部分に対する評価減の特例(小規模宅地等の特例、借家権割合等)を適用可能
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条件が整えば、実勢価格の半分以下で評価されることも
📌 例えば、実勢価格1億円の収益不動産が、相続税評価額では6,000万円以下になる──
相続税評価額が下がるということは、支払うべき相続税額が下がるということです。これは、現金だけでなく、株式や投資信託などの金融資産では得られない、“見えない控除”なのです。
4. 評価圧縮の「前に」考えるべきことがある
ただし、「評価を下げられるから買う」「圧縮効果があるから残す」だけでは、
納税や分割の段階でつまずくことが少なくありません。
❌ よくある失敗例:
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評価を下げるために不動産を多く買ってしまったために、現金が足りず、相続税の納税のために不動産を“安売り”する羽目に
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複数の相続人間で一つの大きな不動産を共有名義で相続され、分けられずトラブルに
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評価圧縮のことだけを考えて売りにくい物件を買ってしまった。相続後、物件が売れず、納税が間に合わない
だからこそ、不動産を活かすには──
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納税原資として使えるのか?(収益性・換金性)
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分けられる物件か?(共有にならない工夫、評価調整資産とのバランス)
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そして、そのうえで評価が圧縮されているか?
という3段階を意識しておくことが大切なのです。
5. まとめ:評価は“最後の武器”。でも不動産は、三つ全部に効く
評価圧縮は、不動産の持つ大きな魅力の一つです。
でも、それは「納税できる」「分けられる」という下地があってこそ活きるもの。
そして実は、不動産はこの3つすべてに関われる珍しい資産でもあります。
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現金収入で納税原資に
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共有を避けた保有で分割対策に
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評価圧縮で節税対策に
だからこそ、不動産は相続対策として重宝され、富裕層の方々にとっても攻めの資産でもあり、守りの資産でもあるのですね。
相続を見据えて不動産をどう持つか、どう残すか──
今後は、より具体的に、不動産による評価圧縮や分割対策の実務に踏み込んでいきたいと思います。
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